Railway Frontline

鉄道にまつわる最新の情報やデータを収集・分析しながら、新しい時代における鉄道の在り方について理解を深める場となることを志向しています。

”警備強化のための値上げ”は方便なのか?京成スカイライナー料金改定【鉄道最新情報】

京成電鉄は、京成上野駅と成田空港を結ぶスカイライナーの全列車に警備員を添乗させるのに合わせ、スカイライナー料金を30円~50円程度値上げすると発表しました。値上げの理由は本当に警備強化だけなのでしょうか…?

皆さまこんにちは。「Railway Frontline」運営者のNagatownです。今回の【鉄道最新情報】では、京成スカイライナーの料金改定に関する考察をお届けします。

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写真は現在スカイライナーとして走るAE形(青砥駅、筆者撮影)

料金改定の概要とその”理由”

3月25日に京成電鉄が発表したところによると、2022年4月25日(月)より、スカイライナーをはじめとした同社の有料特急の全列車に警備員が乗車するということです。また、これに伴い特急料金を改定。大人料金で30円~50円程度の値上げとなります。また、スカイライナーに乗車できる各種企画乗車券も同程度値上げされます。

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近年、国際的なテロの脅威が高まる中、国内においても鉄道施設内での傷害事件が相次いでいるなど、鉄道のセキュリティ向上に向けた対策は急務となっています。同社はこれまでも警察と連携した巡回強化や防犯カメラの増設、各種訓練の実施などに取り組んできましたが、今回、その対策を更に強化する形です。

京成電鉄は「今後も、お客様の安全・安心を第一に事業運営を行ってまいります」としています*1

 

コロナ禍による乗客減との関係は…?

さて、ここで少しだけ”深堀り”してみましょう。各種の警備強化は他の鉄道会社でも行われていますが、それらの会社では値上げは実施されていません。そうなると京成スカイライナーに特有の”他の理由”を探りたくなってしまうというものです。

まず、スカイライナーと言えばすぐに思い当たるのが、コロナ禍による利用者の減少です。インバウンドの消滅を始めとした航空業界の苦境と連動して空港特急であるスカイライナーも厳しい状況に追い込まれています。また、2020年の東京オリンピックに向けて車両の増備といった拡大投資を行いましたが、それも今となっては裏目に出ている状態です。

スカイライナーをはじめとした有料特急の輸送人員は2019年度から2020年度にかけて8割以上減という壊滅的な状況に。2021年度には増加したものの、2019年度比では23.9%と非常に少なくなっている状況に変わりはありません*2。影響は長期化するとみられます。

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千住大橋駅、筆者撮影)データはhttps://www.keisei.co.jp/keisei/ir/financial/monthly.htmlより

こうした苦しい環境に対応するための値上げ、という側面も一定程度あるのではないでしょうか。あくまで推測、憶測にすぎませんが、こうした意見にも一つの考え方としては説得力があると思います。

 

警備員の人件費は実際どのくらいかかる?

もちろん、警備員を新たに雇うことによってコストが増加することは間違いありません。問題は、値上げの幅がそのコスト上昇分に見合っているのかどうか、という点になるでしょう。

警備員の人件費は条件などによって様々ありますが、平日昼なら1人1日8時間で12,000円から15,000円くらいと言われています*3。折り返しのスカイライナーに乗り継いでいくとして、1列車に1人であれば6人から7人必要です。スカイライナーは一日に16時間ほど動いていますから、8時間のシフト×2で一日に14人必要となります。1月を30日とすると15,000×14×30=630,000円となります。非常に荒い試算ではありますが、1月に630,000円の人件費が新たに発生することになります。

 

差し引いても増収効果はかなりある?

では、値上げによる増収分はどの程度見込めるのでしょうか?2021年度の1月の有料特急輸送人員は147,000人。特急料金の値上げは30円から50円ですが、30円の値上げ幅となるのは青砥発着の場合などで、スカイライナーの利用者数に占める割合はそれほど多くないでしょう。ただし、値上げ幅が30円となるモーニングライナーイブニングライナーの利用者もかなり多いです。そこで、均して乗客1人当たり40円の増収となると考えてみます。そうすると、147,000×40=6,615,000円となります。ごく単純に考えても6,615,000円の増収が見込めると考えられます。

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もちろん、これはかなり多くの不確かな”仮定”を置いて算出したものであり、かなりの誤差が見込まれます。しかしながら、数百万円単位の増収効果が出るという結果自体は費用が多少(数万円~数十万円)増えたとしても大きくは変わりません。

というわけで、本記事における一応の結論としては、「値上げは警備強化のための費用をカバーするが、純粋な増収効果もそこそこ見込めると思われる」ということにしておきましょう。

 

京成スカイライナーが再び多くの乗客で賑わう日が一日でも早く訪れることを願ってやみません。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

またお会いしましょう!

 

2022年3月26日

Nagatown